セルゲイソ連スキーです。
アブハジアをご存知ですか。コアなマニアや怪しい地域に行くのが趣味な方には有名でしょう。アブハジアはジョージアの北西にあります。国際上は殆ど認められていない未承認国家です。
ロシア、モルドバ、沿ドニエステル共和国、南オセチアなどいくつか承認している国はあります。
到達難易度
到達難易度はアフリカや中東の制限された国、トルクメニスタンなんかと比べれば楽ですが、やや高いです。ビザなし観光渡航に慣れすぎた日本人にとって面倒です。ロシア側ジョージア側からどちらからも何らかの事前申請が必要です。ロシアからの場合ロシアのマルチエントリービザ。ジョージアからの場合、入国の事前申請が必要です。
https://syachikuai.com/2019/11/02/abkhazia-visa-on-arrival/
面倒とはいえ現在停戦中で紛争地ではありませんし、2019年現在外国人でも特に問題なく入れる地域です。
アブハジア鉄って一体なんだ
そんなアブハジアには鉄道が走っています。旅客はロシア国鉄がモスクワ発スフミ行きが出ています。これはРЖДホームページかアプリで確認できます。それ以外の情報は、場所が場所だけにネット時代とはいえ細かい事はあまりわかりません。アブハジア鉄道には公式ページもありません。コーカサスの総武流山電鉄です。一応wikipediaには記事はありますが情報は更新されている保証はありません。
アブハジア鉄ってなんなんや。
実際に行ってみた
今回ソチ方面へ行く機会がありアブハジアが近いので行ってみました。
行ってみたところ、アブハジア鉄道は
- ロシアからの長距離旅客
- 貨物
の運行が2019年現在行われています。
加えて、エレクトリ―チカは夏だけロシアのアドレルからガグラまで走っているようです。流線エレクトリーチカはもう他界したようで居ません。
長距離旅客
モスクワからの長距離旅客列車です。
特筆した点はなく、ロシア国鉄に乗り慣れていればいつも通りの列車です。プラッツカルテ、クペー、もっとブルジョアな客車。
アドレルまでのロシア区間は電気機関車です。アドレルからはディーゼル機関車に変更します。
アブハジアを走るモスクワ直通RZD
よく見ると掻き分けた雑草がついてた。
2ТЭ116У pic.twitter.com/RbuzlVnfEL— 石器時代 (@NsaYamamoto) October 26, 2019
機関車は2ТЭ116У が充てられています。
旅客ダイヤ
モスクワから約38時間です。
306M:
モスクワ19:50
クラスノダル22:38
Veseloe7:13
スフミ10:49
305C:
スフミ14:05
Veaeloe Веселое18:50
クラスノダル 1:28
モスクワ 4:52
途中駅は公式ページで確認できます。上記は2019年10月24日現在のダイヤです。モスクワ発10月30日まで毎日運転。
夏にはサンクトペテルブルグ直通の単独運転の列車も走るようです。
切符の購入
ロシア→アブハジアの場合
仮にロシアからの直通でアブハジアに行きたいならマルチビザがあれば乗ることはできます。(ロシアから入ってジョージアに抜けるのは逮捕はないらしいですが安くない罰金が取られるとのこと)
この国際列車はネット予約は出来ません。駅の窓口まで行く必要があります。ロシア発アブハジア行の国際列車は外国人だからと言って特に発券拒否という事態はなくスムーズにいつも通り購入できます。ただし、発券時にマルチビザがあるかどうかは全く聞かれません。
アブハジア国内のみの場合
問題なく買うことはできるのですが、チケットは異様に高価です。途中の小さな駅、例えばガグラやグアドゥタの切符売り場で買うと、発券手数料が300ルーブル(約510円)です。RZDのシステムを使う関係なのか理由は良く分かりませんが、これは相当高いです。
例えばガグラからスフミへ行く場合、ミニバスでは200RURです。一方、鉄道は乗車券467.3RURと手数料300RURの合計767.3RUR です。3.5倍かかるのは痛手です。
旧券
アブハジア鉄道のオリジナルの切符のようなものは見かけませんでした。
ガグラ駅ではRZDの旧券で発行しました。バスより3.5倍高いとはいえコレクションを考えると悪くないかもしれません。
近郊列車
электрички абхазия (エレクトリーチキ アブハジア)で画像検索をすると、ノヴィアフォン駅に流線エレクトリ―チカが入選している写真を見ることができます。しかし今はありません。日本語版wikipediaによると2007年まではエレクトリ―チカが走っていたとありますが正確な情報化は分かりません。
Как добраться из аэропорта Сочи Адлер в Абхазию?
→ノヴィアフォン駅に停まる流線形チカの写真。いつのものなんでしょうね。
アドレル-ガグラの近郊列車
Электричка на время курортного сезона свяжет Адлер и Гагру
こちらのニュースによると2015年6月10日から観光シーズンのみ1日3往復がガグラ―アドレルを運行するとのことです。
Гагра – Адлер: электричка и поезда
2017年の運行。
Адлер Гагра электричка 2019: расписание, фото, цены на билеты
2019年からは新型車両で運行するというニュース。どうやら今年2019年もやっていたらしいですね。
私が2019年10月に行ったところシーズン外のため走っていませんでした。
※2021.8追記
2021年は夏季限定臨時列車がエレクトリーチカではなく、豪華な客車が充当されるそうです! ロシア国鉄公式ページをチェックしてね。
https://rzdtour.com/tuapse-gagra/
貨物
アブハヅアを訪れるべき最も大きな理由は貨物列車、ВЛ8でしょう。
ВЛ8が主力。というよりВЛ8しか走っていません。vl10すら無い世界。この車両の塗装ってジョージアのままですよね…? ジョージアのVL10の写真と同じなのでそのまま使っていると思われます。
ВЛ8おじさんサービスで優勝 pic.twitter.com/y19nE3TPFm
— 石器時代 (@NsaYamamoto) October 25, 2019
運転士のおじさんが手を振ってくれる場面もありました。同日中に何度も同じ運転士と機関車が往復していて、私は何度も撮影しました。この写真は2回目のときでしたが流石に3,4回目には真顔になっていました。いつまでいるんだこいつと思っていたに違いありません。
また,アブハジア滞在中、ВЛ8 914号機以外、他形式すら一切見かけなかったので、ひょっとしたら独立時に孤立したときこいつしかいなかった可能性、または他の機体は全て故障中の可能性もあります。断言はできませんが..
スフミの東の非電化区間の近くの海岸でぼーっとしていたところ、いきなり音が聞こえたので大慌てで藪を突っ切り撮影した非電化区間の貨物です。貨物を引いています。
このM62という機関車は1965年から2001年まで生産されたロングセラー商品らしく、3200両以上生産されました。
貨物ダイヤ
電化区間の貨物については、かなり不定期です。
ガグラ周辺で張ったところ、1日目は2往復4回目撃しました。単機1回、貨物2回、あとはВл8+ТЧ1両でした。
2日目はもっと晴れたので出撃したところ0本しか来ませんでした。
非電化区間の貨物M62については運よくというかいきなり来たのでこれも良く分かりません。
M62はサービストレイン(保線)を引いて電化区間を走っているところも見かけました。私が見たのはロシアとの国境付近。どこで何時に待っていれば確実に来るというのは無さそうです。
設備
スフミを挟んで西は電化区間、東は非電化になっています。東の非電化区間にも元々は架線があった跡はありました。スフミから8kmくらいの地点までは実際に行きました。それより東は確認していません。
モスクワ発の旅客列車はディーゼルです。スフミ以西の貨物もディーゼル化してしまった方が良さそうに思えます。貨物は毎日全区間を走ってるわけではないのに、そのためだけにスフミ以東の区間を通電しメンテナンスするわけです。
先述しましたが、ВЛ8 はたまたまなのか分かりませんが914という1個体しか見かけません。同様にディーゼル機関車も個体数が不足していて仕方なくスフミ以西で未だに電気機関車を使っている説もあります。(確証はありません)
駅
ガグラ、スフミ、ノヴィアフォン、スフミ駅は主要駅で大きな駅舎です。これら主要駅は立派な神殿のような装飾がされた柱が目立ちます。しかし駅舎は放棄されています。ガラスは割れ、ドアはぶち破られ、外壁のコンクリートは落ち、鉄筋が見えている部分もあります。
内部はゴミが散乱し、かつて運行設備だったような配電盤が倒れて転がっています。その無残な内部はまさしく惨状。駅の機能は巨大で無残な駅本屋ではなく、隣にある小さめの建物か小屋で、切符の販売がされています。
途中の小さいプラットホームと屋根だけの駅はすべて廃駅になっています。駅だけでかなり面白いので後日別途まとめ投稿します:リンク
ウンコ
うんこが落ちている。牛うんこです。通常の駅を利用するだけなら問題ありません。駅にはうんこは落ちていません。いや、端っこの方には落ちているかもしれない。
撮り鉄のために線路をうろつくとなるとかなり話は変わります。
牛のうんこはあなたを出迎えてくれます。
アブハジアでは牛が放し飼いしている光景を良く見かけます。彼らは道路や線路を普通に横切っています。気まぐれにうんこをするので確率で線路上にもうんこを残します。ヲタクは臭いので、同等の匂いだからウンコに関しては許容できるでしょう。
動物の白骨死体
うんこを上回るインパクトを私に与えたのは白骨死体です。
どう考えてもВЛ8に轢殺された動物の死体がいくつも転がっています。おそらく牛なんだと思いますが、他の種の可能性もあります。数は少なくなく、正確な記憶ではないですが10キロメートルの間に5体はありました。流石にこんなものが転がってるのは人生でも見たことありません。アブハジアはまだ途上国なんだなと実感します。列車は勝手に歩いてくる牛を回避できませんがそもそもその辺りを家畜が歩き回っているということです。画像の他にも動物の頭部の形の骨も落ちていました。
死んでる信号
信号機はあるんですがどれも灯っていません。どうやって閉塞しているのだろうか。1日旅客1往復とあとは貨物、それも1編成しかない? Vl8とディーゼル機関車のみなので、人力での閉塞が可能なのかもしれません。下にある信号設備の箱も同様に放棄されているとしか思えない有様。
PC枕木
アブハジアの路盤と枕木は、その雑草には似つかわしくなく想定よりもしっかりしていて驚きます。どうやらロシアの主導で線路は改良されたようです(日本語wiki)。
旅客に乗った印象は、線形はカーブが多くスピードは出ませんがコンクリート枕木のおかげで安定感がありました。
ゲテモノ
1度だけゲテモノと遭遇しました。私は線路にかなり近い場所に居たのに警笛も鳴らさず親切なゲテモノでした。
雑草
撮影地はアブハジアは温暖な気候なので雑草や木が生い茂っています。側面から列車全体を撮影できそうな広い場所は相当少ないです。しかも単線で厳しい。線路際にここまで樹木が多いのは意図的に植えつけたのでしょうか。
さらに、
ガグラで撮影を行った所、線路上と周辺はバラ科の植物が異様発生しています。幸い丈は低いので踏み潰せばなんとかなります。高めのブーツと破れてもいい投げやりな長ズボンが必要です。
大きめの橋で撮影しようと思っても、未だにソ連式で橋守り(監視員)が居ます。р.Бузбという川ではどう考えても廃屋にしか見えないボロボロのコンクリ小さな小屋がありました。撮影のために近づいてみました。すると”やあこんにちは”と言わんばかりに中から人が出てきました。幸いロシアとは違って緩い普段着の若い男でした。ロシアだと迷彩服の軍隊なのか分かりませんが怖そうな人が居ますよね。
おわりに
ВЛ8の最後の楽園。ファイナルディスティネーション。
コーカサスの山を背に走るソ連カー。
ヨーロッパからも東欧以上に離れており、もちろん日本からも行きづらいコーカサスの国々。その中でもさらに未承認できな臭い僻地に、2019年の今も機関車が残っていたとは。
乗り鉄にとってはロシア直通の一般的な客レが一日1往復しているだけなので過度な期待はできませんがВЛ8は一見の価値があるでしょう。
約束の地アブハジア。良いぞ。隣の都市のソチから来ると50年丸ごとタイムスリップしたような気持ちになれます。ロシア側のソチは、2014年ソチオリンピックの際に一気に近代化が進みました。一方アブハジアは1960年代製造のВЛ8が走っていて比喩表現でなく本当に50年落差があります。
マジソ連1000%ВЛ8 神が我々ソ連鉄に残したВЛ8… ヴェルボースミ ヴェルボースミ
アブハジア鉄目撃してみませんか。
君はアブハジアの鉄道を知っているか 旅行記 VL8最後の楽園
Сочи Sochi Адлер Adler Гагра Gagra Гудаута Gudauta Новый Афон New Athos
Цандрыпш Tsandrypsh Весёлое Vesyoloe
Sukhm Sukhumi Абхазия Abkhazia Abkhazia